〖短編〗アオゾラ。―101ページの思い出―
符和が去った後─────…
「…あたしの符和ちゃん、追い詰めたね…?」
東は般若の面を付けたようだ。
「…当然のことを言ったまでだ。
アイツはステージで歌詞忘れるほどしっかりやってねぇ。
そもそも、練習してるとこあんまみねぇ。
だったら、真剣にやってる奴らが可哀相だから、退学しろと言ったまでだ。」
般若に屈しないところ、一ノ瀬は相当怒っているようだ。
しかし、東がため息をつき説明することで、今度は罪悪感が彼を襲った。
「はぁ─────────…
アンタ放課後さっさと帰ってんでしょ。
そん時符和ちゃんはいた?」
「いたけど。」
「符和ちゃんは、みんな帰った後でちゃんと練習してる。
アンタ気付かない?
符和ちゃんが前より息が続いてて、音質もよくなってるって事。」
「そう、いえば…」
「さっきのアンタ、最低だったよ。
少なくとも符和ちゃんは、みんなが帰って三時間は学校に残って練習してる。
それに、夜は必ずジョギングをする。
部屋でもお風呂上がりとか、暇なときは腹筋や腕立て伏せなんかやってるみたいだよ?」
…何気ない顔でさらっと言ったが、コレはすべて符和につきっきり(ストーカー)して発見した事実である。
「だから、符和ちゃんはきっと、誰よりも音楽に真剣に取り組んでる。
それを、符和ちゃんより努力してないアンタが、真っ向から否定したのよ。
ホンット最低ー。」
「うっ…」
どうやら怒りが消え、般若が利くようになったようだ。
「さーて、符和ちゃんどうする?」
「戻ってくるのを───…「アンタが最低なこと言うからでしょうが。」
ですよね、と言った顔でうなだれる一ノ瀬。
そして、渋々符和が走り去った方向へと駆け出したのだった。