〖短編〗アオゾラ。―101ページの思い出―
「は、話すって、なにを…」
「符和ちゃん、今日は部活なんてないよ。」
あ…
ためすって、そういうことか。
「…」
「ただの忘れんぼじゃないよね?
符和ちゃん、記憶力はいいって俊に言ったんでしょ?」
「はい…あの」
「放課後。
部室きて。
そこで全部聞くよ。」
「先輩…ありがとう、ございます。」
わたしは軽く一礼をして、その場を去った。
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───…
放課後、わたしは言われたとおり部室に向かった。
すると、先輩はすでにいすに座っている。
「良かった…来てくれて。」
「え?」
「無理矢理だったから、きてくれないかと思った。」
「そんな、無理矢理なんて…!」
「…座ろっか。」
「…はい。」
なにから話せば、いいのかな。
わたしが迷っていると、先輩から話をきりだしてくれた。
「最近、記憶力が低下してるのはなんで?」
「…先輩、最初に言っておきます。
このことは、だれにも言わないでください。
…一ノ瀬先輩には、特に…。
それから、今からわたしが話すことを聞いても、わたしは部活を続けたいです。
部活をやめろ、なんて言わないでください。
それを約束してもらわなければ…
いくら先輩でも、話せません。」
「分かった。
絶対約束する。」
…先輩が優しい人で、良かった。
「東先輩…わたし、病気なんです。」
わたしは笑いながら言った。
だって、こんな暗い話したら先輩まで暗いムードになっちゃうし、
わたしよりつらい人なんかいっぱいいるんだから。
だから、暗い顔なんかしない。
だから、泣かない。
「符和ちゃんそれ、ホントなの…!?」
先輩は、ガタッと勢い良く席を立った。
「はい、本当です。
若年性アルツハイマーという病気で…」
「じゃあ、符和ちゃん全部忘れちゃうの…?」
「はい、残念ながら…」
わたしがはにかみながら言うと、先輩はポロポロと涙を流した。
「えぇ!?
先輩、泣かないでください~!!」
「ご、ごめん…一番つらいのは符和ちゃんなのに…」
違う。
一番つらいのは…
「一番つらいのは、忘れられる側ですよ。」
「ふ、ぅ…っ」
「先輩、泣かないでください。
わたしは大丈夫です!
こんな病気なんかに負けませんよ!!
東先輩の事だって、忘れる訳ないです!」
「符和ちゃん…無理して笑わなくても」
「無理じゃないですって!!
わたし本当に、病気なんかにまけませんから!!」
明るく、そういって見せた。