〖短編〗アオゾラ。―101ページの思い出―
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───…
「ただいまー…」
「こぉらー!!
符和、今日はパパの誕生日でしょ!!
…って、それ…」
お父さんの誕生日…忘れて、た。
それに、お母さんに…
大量に買ったメモ帳、見られた。
「まさか符和、アナタ隠して…」
「符和、ひどいぞー!!
パパの誕生日をわすれるな、んて…」
お父さんがかけつけ、語尾がしぼんでいった。
「符和、本当は病気が進行して───…」
「大丈夫!
へーきへーき!!なんかあったときのためだし!」
「嘘!
パパの誕生日は絶対忘れなかったもの…!」
お母さんが、泣き崩れた。
「な、泣かないでよ!!
ほら見て、わたし元気だよっ!?」
わたしは笑ってみせる。
そんなわたしを、お父さんは抱きしめた。
「…無理をするな。」
いつもふわふわしてるお父さんからは想像もつかないような、低くて優しい声だった。
「明日、病院に行こう。」
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───…
「これは…
率直に申し上げます。
お子さんのアルツハイマーはかなり進行しており、入院をおすすめいたします。」
…聞いちゃったんだ。
お医者さんと家族との会話。
…やっぱり、ダメかぁ。
そろそろ、ちゃんと準備しなきゃだなぁ。
そして、わたしは家に帰ってから身支度をまとめ、明日先輩方に別れを告げると決めた。