〖短編〗アオゾラ。―101ページの思い出―



─────────
──────
───…



「東先輩。」



わたしは東先輩を屋上に呼び出す。




「今までありがとうございました。」




そして、深々と頭を下げた。





「え…なに、それ。もうお別れみたいなこと、言わないでよ…!!」




「みたいなこと、ではなく、そうなんです!!」



わたしはまた、笑う。



わたしには、それしかできない。



笑うことしか、できないんだ。





「先輩、わたし入院するんです。


そして、結局全部忘れてどっか行くと思うんで、もう先輩に会うのは今日が最後です!」




「いや!!

入院しても、お見舞い行くもん!」




「…ありがとうございます。


それじゃあ病室だけ教えておきますけど、きてつらくなるのは東先輩だから、あまりこない方がいいと思います!!」



笑おう。



精一杯、笑おう。





「なので、今日が最後です…!!


あの、そこで部長にお願いが…」




「っなに!?


何でも聞くよっ!!」





先輩は、涙で顔がぐしゃぐしゃだった。









─────────
──────
───…




「…先輩。」



放課後、部室に残っているのはわたしと一ノ瀬先輩。



「…オレは東に呼ばれたんだけどな。」



「わたしが頼んだんです。」




「そうか、ならオレは出てい───…「先輩」



わたしは先輩の言葉を遮る。


と同時に、ドアも遮った。




「…これ、新しい曲の譜面です。

伴奏はピアノオンリーです。


簡単な譜面にしました。

先輩なら、一度見れば弾けますよね?」



そう言って、半ば無理矢理譜面を押し付けた。




「…『サヨナラの合図』?」




「…わたし歌うんで、先輩弾いてください。」



「なんでオレが…」



「お願いします。」



「…わかった。」





わたしの言葉に重みがあったのか、先輩はすぐ引き受けてくれた。




< 87 / 114 >

この作品をシェア

pagetop