〖短編〗アオゾラ。―101ページの思い出―
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───…
「東先輩。」
わたしは東先輩を屋上に呼び出す。
「今までありがとうございました。」
そして、深々と頭を下げた。
「え…なに、それ。もうお別れみたいなこと、言わないでよ…!!」
「みたいなこと、ではなく、そうなんです!!」
わたしはまた、笑う。
わたしには、それしかできない。
笑うことしか、できないんだ。
「先輩、わたし入院するんです。
そして、結局全部忘れてどっか行くと思うんで、もう先輩に会うのは今日が最後です!」
「いや!!
入院しても、お見舞い行くもん!」
「…ありがとうございます。
それじゃあ病室だけ教えておきますけど、きてつらくなるのは東先輩だから、あまりこない方がいいと思います!!」
笑おう。
精一杯、笑おう。
「なので、今日が最後です…!!
あの、そこで部長にお願いが…」
「っなに!?
何でも聞くよっ!!」
先輩は、涙で顔がぐしゃぐしゃだった。
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───…
「…先輩。」
放課後、部室に残っているのはわたしと一ノ瀬先輩。
「…オレは東に呼ばれたんだけどな。」
「わたしが頼んだんです。」
「そうか、ならオレは出てい───…「先輩」
わたしは先輩の言葉を遮る。
と同時に、ドアも遮った。
「…これ、新しい曲の譜面です。
伴奏はピアノオンリーです。
簡単な譜面にしました。
先輩なら、一度見れば弾けますよね?」
そう言って、半ば無理矢理譜面を押し付けた。
「…『サヨナラの合図』?」
「…わたし歌うんで、先輩弾いてください。」
「なんでオレが…」
「お願いします。」
「…わかった。」
わたしの言葉に重みがあったのか、先輩はすぐ引き受けてくれた。