〖短編〗アオゾラ。―101ページの思い出―
Ⅲ 病院
日記
あれから、毎日あの曲を聞くことにしてる。
忘れないように、お母さんにも言った。
『この曲を聞きなさいって言って。』
と。
そして、東先輩は毎日のようにお見舞いに来てくれる。
そしてそのたびに言うのだ。
『符和ちゃん、わたしのこと覚えてる!?』
それが、わたしには苦しくてたまらなかった。
みんなからすれば、いつ忘れられてもおかしくないのだ。
だからわたしは、最近笑顔で人の名前を真っ先に呼ぶようにした。
ガラッ
「あ、東先輩!!」
こんな風に。
すると東先輩は、ほっとした顔をするんだ。
でも、そろそろヤバいのは実感していた。
食事をしたのを忘れたり、トイレの場所を忘れたり。
そのたびに、羞恥心がわたしをおそった。
…でも、もう少しで他の病院に移ると思う。
その時は、先輩に知らせないようにしよう。