キケンな恋心
「......あっ、」
沙也加はグラスを傾けたヒロトの左手の薬指に指輪がハメられているのを見た。


「ん?何?」


「あっ、いや、先生も、ご結婚されているんですね......」
沙也加は何故か落胆してしまった表情を隠せなかった。


......だよね、だよね。うん。普通だよね。うん。普通......


「あぁ。うん。大学生のムスメがいるよ」


「そんなに、大きなムスメさんが?」


「いやー、だって僕は、谷村さんより10歳以上年上だからね」
と言ってヒロトは笑った。


......いや、それは別にいいんだけど......あれ?なんで私凹んでるんだ?......



「まぁ、僕の事はいいから、谷村さんの話を聞かせてよ」


「私の?」


「うん。結婚前は何をやっていたかとか、なんでもいいよ」


「わ、私......ただのOLしていて......う〜ん、なんかこうして考えてみると、私って平凡な主婦で何の取り柄も無くって......ツマラナイ女かも......」


「そう?ちゃんと、ママしていて立派じゃない。たまには息抜きも大事だよ」


......うぅ......またしても、先生の優しさに心が奪われそう......哲司からはそんな事言ってもらった事ないし......



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