キケンな恋心
2日後、沙也加は再び、ミユを連れてクリニックに来ていた。



「谷村さんどうぞ」
看護師に呼ばれ、診察室に入った。



「まだ、熱、下がらない?」
医師のヒロトが少し眉をしかめながら聞いた。


「はい......。というか、もっと上がってしまいまして......」
沙也加は、心配そうに小さなミユの身体を抱えながら言った。



「ちょっと胸の音、聴くね」


「う〜ん......少し、脱水状態だな。点滴するから、奥のベッドの部屋に移動して」
ヒロトは、素早い診断を下し、沙也加とミユを奥の処置室へ、看護師に案内させた。



沙也加はミユの容体が思わしくないのを心配そうに、ミユを抱えて処置室に入った。



診察用のベッドにミユを寝かせ、隣の椅子に沙也加は腰掛けた。



まもなく、点滴の用意をしたヒロトが現れた。



ヒロトは、流れる様な速さで、ミユに負担をかけることなく、針を刺し、点滴を開始した。


「ママは大丈夫?」
ヒロトが沙也加に話しかけた。



「えっ?......」



「いや、看病疲れしていないかな?と思って」



「あぁ......。ありがとうございます。大丈夫です」
思ってもいなかったヒロトの気遣いに、沙也加は、少しだけ、嬉しかった......。



こんなに、母親をも気遣ってくれる医師は初めてだわ......



沙也加は、ちょっぴりヒロトに好意が湧いた。



正直、沙也加は、看病疲れをしていた。
夫は、仕事が忙しい銀行マン。
おまけに、転勤ばかり......。
ミユはまだ幼稚園生だが、既に転勤で幼稚園を転園していた。
姉のアヤも小学校を転校したばかりだった。



慣れない土地に引っ越して来て、まだ沙也加はママ友もいなかった。
そんな中、ヒロトの気遣いの言葉に、どれ程、沙也加は嬉しかったことか......
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