キケンな恋心
「先生の奥様は、どんな方ですか?」
沙也加は、急に話題を変えた。


「んぐッ!ゲホッ!」
ヒロトはむせた。


「あっ、ごめんなさい。急に......」


「いや、いいよ。大丈夫。妻は大人しいヤツだよ」


「へぇー。そうなんだぁ」


「なんで?」


「いや、あの先生は、医者だし......ルックスもいいし......お金持ちで......。どんな奥様なんだろう?って単純に思って......」



「そんな僕なんかを、過大評価しないでくれよ」
そう言って、ヒロトは笑った。


「そうでしょうか?もし、私が妻だったら心配です。......その......愛人とか......」


「んグッ!」
またヒロトはむせながら笑い、


「それが世間の見方なんだろうなぁ」
と、冷静さを保ちながら、ゆっくりと紹興酒を飲んだ。


「僕は至って平凡な人間だよ。たまに、こうして沙也加と食事するのが気分転換で楽しいよ」


「そ、そうですか......お世辞でも嬉しいな......」


「じゃぁ、沙也加の旦那さんは、どんな人?」


「えっ?ウチ?......ウチは忙しい銀行員です」
......やっぱり哲司のことを聞かれると、胸が痛いな......哲司、何にも悪くないし......私の勝手だし......



「まぁ、お互いの家庭の話は、いいよ。もっと楽しい話をしよう」
そう割り切れるヒロトを沙也加は大人だな......と、感じていた。


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