キケンな恋心
偶然
......だめ、だめ!私は哲司の妻。そして母親だ。私には、家庭がある。
......そう!私に恋はもうあり得ない。独身じゃないのだから。それに、きっと先生だって、ご家庭が......
「ママー!」
ベッドに寝ていたミユが起きたようだ。
「どうした?ミユ、お熱下がったかな?お粥食べようっか」
ミユを抱き起こしながら、沙也加は割り切ろうと軽く頭を振った。
〜数日後〜
ミユは、すっかり回復し、姉のアヤとお絵描きをしているのを見ながら、沙也加は夕食の支度をしていた。
「あっ、いっけない、お醤油を切らしていたんだ......」
慌てて、コンロの火を止めた。
沙也加はエプロンを脱ぎながら、姉のアヤに
「アヤー!ママね、スーパーにお醤油を買いに行ってくるから、ミユを見ていてくれる?」
しっかり者のアヤは、
「うん!わかったぁー!」
と、返事をして、またミユとお絵描きを始めた。
沙也加は急いで、財布と携帯を持って、近所のスーパーに向かった。
スーパーは、ヒロトのクリニックを超えたところにある。
沙也加は、クリニックの前を通りかかり《本日の診察は終了しました》の札をチラッと横目で見て......
そっかぁ。もう19時だものね......とっくに終わってるよね......っていうか、何、気にしてるんだろう......私......早くお醤油買って帰らなきゃ!
沙也加は小走りにクリニックを通り過ぎた時......
「ドスッ!」
と、ぶつかった。
「す、すみません!よそ見をしていて......」
沙也加は頭を下げようと、ぶつかった人を見て......
思わず、絶句した....
「せ、先生!!」
「あぁ!谷村さんじゃないですか!」