御劔　光の風３
「長、父は今どこに？」

しばしの沈黙の末、最初に切り出したのは貴未の方だった。

その声は震えながらも言葉どおり会いたい気持ちで表れている。

しかし期待とは異なり一瞬にして寂しげな空気がそこに生まれてしまった。

長は悲しげに微笑むと貴未の頭をあやす様に優しく叩く。

その手がもう答えているようで貴未の鼓動が切ない音をたて始めて息苦しくなった。

「しばらく前に亡くなった。最後までお前の身を案じていたんだが。」

息を吸ったところまでは動けていたのだろう。

しかし身体の動きも思考も止まり視界が歪んだように見えて何かに吸い込まれそうになった。

よろけたのか身を退いたのか一歩下がると誰かが支えるように背中に手をあててくれたのを感じる。

その瞬間に吐き出た息がようやく身体中の血を巡らせたように感じた。

手足が冷たい。

頭の片隅で微かに思考が回ったが目は何を捉えているのか分からず、心なしか全身の力が抜けているようだった。

父が死んだ。

「貴未。」

それ以上の言葉はいらない。長は感情を込めて貴未の名を呼んだ。
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