御劔　光の風３
こんな広い足場を作れば襲ってくださいと言っているようなものだと忠告したときは、伝統的なものだと不思議な回答をされた。

そんな昔ではないのに遠い記憶が戻ってきたようで身体の力を失うような感覚に気力も失いそうになる。

これからカルサと向かい合って自分は何をしたいのだろうか。

貴未の胸元には〈永〉がある。

手に取り見つめると、まるで〈永〉の中にいるマチェリラが心配そうにこっちを見ているように思えた。

きっと気のせいではない筈だ。

貴未は苦笑いをして悲痛の表情を浮かべた。

思いが溢れすぎて目を開けてはいられなかった。

気持ちを落ち着かせる為にも固く目を閉じて視界を遮り、震える深呼吸で平常心を取り戻そうとする。

そして不意に気配を感じ、貴未は勢い良く振り返った。

そこに立っていたのは久しぶりに見る千羅の姿、奥にはソファに横たわっている日向がいた。

「日向！」

彼の身に何が起こったのか分からず、貴未は思わず彼の許へ向かおうとした。

しかし千羅は横に手を出して彼の行動を止める。

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