御劔 光の風3
あの苦々しい記憶が呼び起こされ意を決して口を開き声にした。

「邪竜に。俺がこの手で殺した。」

正確には千羅だったが、カルサは自分がやったことだと思っている。

決めたのは自分だ。

「…そう。」

マチェリラの答えは短く、一筋の涙を流した。

それは覚悟を決めていた涙、目を閉じて涙を落とすと昔話を始めようと口を開いた。

思い出すだけでも胸が痛い。

あれは悲劇と呼ぶには残酷すぎる出来事だった。

「あの出来事の後…玲蘭華に会ったのは覚えてる。怒りも恐怖も全てぶつけて頭の中を整理しようとしていたのね。」

何があったのか分からない、理解を超える速さで現実は進んでゆく。

いま目の前で起こっているのは現実なのか、夢であって欲しいと願う間もなく最悪が次から次へと生まれていった。

辺り一面に殺戮の跡、誰も止めることが出来なかった。

それは止めようとした者はもういないということだ。

やがて世界は終わりを告げ未来に希望を託した。

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