御劔 光の風3
この感覚は何だろうか。

やがて遠くから女の人の高い声が届き青年は身体を起こした。

「貴未ーっ!?」

マチェリラはその声に動きを止める。

それはいつか聞いた名前、その瞬間目の前にいた青年が勢い良く手を挙げた。

「永(はるか)!」

マチェリラは俯いていた顔を上げた。

貴未と永、それは忘れもしない名前。

遠くから駈けてくる姿をじっと見ていた。

少しずつ鮮明になる表情、目的の貴未の姿をしっかり捕らえて彼女は笑顔で走ってきた。

「はぁっ!しんどかったー!」

目の前に辿り着き、永は膝に手をついて全身で疲れを訴えた。

貴未は笑いながら永の背中をぽんぽんと叩き彼女の頑張りを労う。

永は深呼吸を数回して勢いよく顔を上げると、ばちっと目が合ったマチェリラに笑いかけた。

「こんにちは!」

「…こんにちは。」

永の勢いにつられて戸惑いながらもマチェリラは返す。

思いの外、声はしっかりと出ていた。

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