御劔 光の風3
声に出してこの蠢く感情をどうにかしたくても何を言葉にすればいいのかが分からない。

納得も否定も関係ない言葉でさえも口にすればその色に染まってしまいそうで怖かった。

手で口を隠し震える気持ちのまま湖の方を見た。

もうそこに竜はいない、昂る感情を押さえて震えるため息を吐いて俯いた。

それ以来、貴未は口を開かなかった。




「また帰れなかったのか?」

「まあね。でも次こそは糸口を見つけてくるよ。」

「そうだな。お前を待っている人がきっと心配している。」

「ああ。」

「貴未、俺は少しお前が羨ましいよ。」




それはカルサと貴未が随分と昔に交わした珍しい会話だった。

そういえばあの時のあの言葉、思い返すと普段の何気ない会話の中にもカルサの言葉は随分意味深なものがあった。

些細な一言にも含まれるものが多い時もあった。

もしかしたらカルサはずっと信号を出していたのかもしれない。

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