御劔 光の風3
今までの側近が誰も示してこなかった情を向けてくるナータック、次第にカルサは心を許して雷神としての務めをナータックに話し始めた。

それはつまり千羅の存在も知られるところとなったということだ。

話を聞いて驚いてはいたがナータックの態度はそれまでとは少しも変わらない、聞いていなかったのかと疑いたくなる程に気にもとめていなかったのだ。

全く気にしてないのかナータックからは何も聞かれない日々が続く。それが彼なりのカルサへの気遣いだと知れるまでまた時間がかかったのも懐かしい話だ。

気に入らなくて可笑しくてナータックを困らせて楽しんだ時期もあった。

いずれこの国を去る時も笑って頭を下げて見送ってくれるだろうとどこかで期待していたのだ。

今はもう叶わぬ願いとなってしまった。

「色々と苦労をかけると思うが宜しく頼む。」

「いえ!未熟なため至らぬ点ばかりかと思いますが、懸命に努めますのでどうぞ宜しくお願い致します!」

暫く触れ合わなかった初々しい空気にカルサも自然と笑みをこぼす。

ナータックが初めて配属された時のことを思い出し少し寂しい気持ちになったのをハワードは感じたようだった。

「早く業務に慣れ、陛下のお力になれるように努めなさい。」

「はっ!」

ハワードの言葉にまた大きな返事をするとエプレットはこれ以上にないほど背筋を伸ばして緊張を表した。

これからの仕事に向かい、不安交じりの緊張を高めていくエプレットの向こう側にかつての側近であるナータックの姿を見たのはカルサだけではない。

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