御劔 光の風3
それだけで感じる空気の重さにサルスの中に不安が生まれる。

「あいつは…あの時玉座の間に居た。リュナを守り怪我を負ったのは確かエプレットの筈だ。」

玉座の間、リュナを守る、その言葉でカルサがいつの話をしているのかが分かる。

それはあの襲撃の時、カルサとリュナが突如現れた者によって封印されてしまった時の話だった。

「エプレットは…あの時の一部始終を見ている。」

改めて声に出されサルスは言い様の無い不安から何も答えることが出来なかった。

揺れる瞳がカルサの視線とぶつかる。

「そういうことだ。」

何がそういうことは聞かなくても分かっていた。

それはつまり、エプレット自身がカルサやサルスに対してどんな感情を持っているのか。

今後はそれを軸に過ごすことになるのだとサルスは静かに理解した。

「陛下、殿下。少し宜しいでしょうか。」

「なんだ?」

エプレットの声にカルサは何事もなかったように反応するが、サルスはうまく反応が出来なかった。

思った以上にあの現場を見られているということに衝撃を受けているらしい。

色々あり過ぎて気にかけられなかった部分がこうして身近に現れたということは何か理由があるのかもしれない。

そんな変な考え起こしてしまいそうだ。

「どうした?」

ほんの1秒にも満たない時間だったかもしれないが、サルスの中ではかなり出遅れたような気がして焦りが生まれる。

エプレットの問いに答えながらもサルスの中の不安が広がっていくのは止められなかった。

気にすることはない、事が起きた時に対応すればいいとカルサは態度で訴えているような気もする。

誰にも気づかれないように大きく深呼吸をするとサルスは気持ちに区切りをつけて頭を切り替えた。

まずは新しい体制に慣れていく事が大事だ、気持ちが忙しくなることを考えてサルスは自分のしごとの整理を始めた。

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