御劔 光の風3
いつまでもこの場にいることも出来ずエプレットはゆっくりと足を動かし自室に向かうことにした。

カルサの予想通り、サルスの不安通りにエプレットの中ではあの時のことが強く引っかかっていた。

目の前で胸を貫かれたカルサ、封印されたリュナ、カルサの姿に変えたサルス、口止めされた以上そのことは誰にも告げることはない。

たとえ口止めがされなかったとしても信じられなくて口にすることが怖くてきっと誰にも言えないだろう。

あれが雷神というものか、そして雷神を支えるということはそういうことなのかと身震いがした。

あの場所にずっとナータックはいたのだと、結果ナータックは復帰できない程の深手を負って今でも意識を取り戻していない。

もやもやとした感情はあの時からずっとエプレットの中にあった。

そしてそれを同時に体験した人物がいる、それがタルッシュだ。

彼の場合は共に行動をしていたナータックの悲劇の現場に居合わせていた。

というよりはナータックと別れた後の物音に気付き駆けつけたところ最後の戦いに居合わせたということだったらしい。

その話を聞いてエプレットは言葉も無かった。

自分が思うよりも自分たちが持つ特殊な能力というのは恐ろしいものだと知らされた、それと同時に能力を持ちながらも使いこなせない自分たちに腹が立ったのだ。

なんと無力な事か、宝の持ち腐れとはまさにこのことだと自身をどれだけ罵っても足りなかった。

リュナの指導による訓練はそういう意味でも気合が入ったが、納得いく場所に行く前に側近というナータックの跡継ぎに任命されてしまう。

以前から秘密裏にナータックの指導を受けていたが、それがこんな時にこんな形で実を結ぶとは思いもしなかった。

しかも配属されたのは国王であるカルサの側近、前々からサルスの側近になる為と言われながら過ごしていたエプレットにしてみれば力が空振りするような結果だったのだ。

それもあってか力が入らない。

< 247 / 729 >

この作品をシェア

pagetop