御劔 光の風3
「任せてしまうが…。」

「構いません、悪くない気分ですよ。」

口の端で笑みを作り千羅はからかうような素振りを見せた。

それが千羅なりの気遣いだと分かるだけにカルサの気持ちは少し軽くなる。

「見送りには行くつもりだ。ナルには話をつけている。」

「…側近殿には?」

「つけきれていないな。」

カルサの素直な告白に千羅は肩をすくめておどけて見せた。

「悪いが後回しだ。」

「命取りにならなければいいですね。」

「全くだな。」

遠い目をして窓の外を眺める、その姿は背負うものが多すぎる人物が見せた疲労の色でもあった。

はまり切らない何かが少しずつ状態を崩して不安定な造りになっていくのは感じている、それを何とかするのも自分の役割だと分かっていた。

だがそこに費やせるほどの時間を確保する余裕は無い。

本来なら寝る間も惜しんで全てを遣り尽したいのだ、しかしそれは許されないしよくないことも分かっていた。

「これ、瑛琳から渡すようにと預かりました。」

片手に収まるほどの小さな包みを受け取りカルサは穏やかな目でそれを見つめる。

「…少し呆れていたようにも見えましたが。」

「瑛琳がか?」

笑いながら尋ねるカルサに千羅は肩をすくめながら頷いた。
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