御劔 光の風3
「だろうな。ありがとう、助かったと伝えておいてくれ。改めて礼を言う。」

眉をあげてため息を吐く千羅は多少投げやりな態度で了承の声をもらすと、また元の位置にと数歩後ろに下がった。

「総本山はこちらに任せて…国のことを早くまとめて下さい。」

指先で払うようにしてあしらうがその態度の向こう側にある千羅の思いを知っているだけに愛しく思える。

調子を戻そうとしてくれているのだ。

「そうさせてもらう。」

そう笑うとカルサは立ち上がり足を踏み出した。

そのまま上着を手にすると羽織りながら扉の方へと向かう。

「リュナの所へ行ってくる。」

千羅の横を通り過ぎる際に告げられた言葉。

「別に報告しなくても付けたりしませんよ。朝までごゆっくり。」

「阿呆。」

微かに笑みを浮かべカルサは部屋を後にした。

扉の閉まる音で千羅の引き締めていた気持ちが緩むのを感じる。

机の上の書類の山、使っていた筆、隙間なく並べられた書物、並べられた机、執務室で見慣れた景色を改めて目に映し思いを馳せた。

この場所を離れる日もそう遠くない。

そう思うとまた違う感情が千羅の中で生まれた。

「ここだけじゃない。」

他にも置いていかなければいけないものは沢山ある、切り捨てなくてはいけないものも少なくはない。

少しずつ離れていく主人を思いながら千羅は静かにその姿を消した。

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