御劔 光の風3
レプリカを惑わすほど、いつも通りにサルスは笑っていたのだ。

「はい。」

レプリカはスカートの裾をつまむと深々とお辞儀をし、ゆっくりと部屋から出ていった。

一人残った部屋でサルスはゆっくりと背もたれに身体を預ける。

天井を眺めていてもそこに何かある訳ではない、どこを見ているのか遠い目をして深く考え込んでしまった。

浅く深くを繰り返す思考はやがてやるせない思いで全身を侵食していく。

「自分で選んだ道だ…。」

そう呟いてみた。

握り締めた拳が震えている、それは彼の中での戦いを表わしていた。

決して表に出してはいけない胸の内の叫びは堪えきれずに拳に表れる、本当は叫んでしまえば楽なのに許されないことだと自分で決めたのだ。

歯を食いしばり苦悩の姿を見せていたサルスは突然手の震えを止めた。

どことなく違う雰囲気を一瞬にしてまとい、投げ出していた身体を戻して握り締めていた拳を見つめる。

いつにない無表情は誰にも見せたことのないもの。馬鹿にするような目で握っては開くの動作を繰り返すと吐き捨てるように笑った。

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