御劔 光の風3
気圧の変化に戸惑う民たちを他所にまた立ち上がると声を張り上げた。

「外からは何も見えなくなる結界だ。」

大丈夫だと言われても明らかな異常事態に誰もが不安そうな顔をして救いを求めている。

これだけでは安心材料にはならないのは明白だ、カルサは兵士や女官の一人一人と目を合わせ最後に一番近くに居る兵士に声をかけた。

「すまない、名前は?」

「フ…フライアです!」

「フライア、お前は西向きの扉の前で待機しろ。横にいる…きみ、名前は?」

カルサは一人一人に名を尋ね、彼らに自ら指示を出していく。兵士、女官を問わずに一人のもれがないように確実に回していく様は部屋の中の体制が整っていくのを感じられ次第に安心感をもたらした。

カルサの声が部屋に響き、それは部屋の中の雰囲気も塗り替えていく。

迷いもなく着実に指示をしていく、自らの役割を認識した兵士たちも迷いなく自分の持ち場についていった。

「魔物は入れない。この結界は俺が出て完成する。後は頼むぞ。」

近くにいる兵士にそう語りかけ、カルサは部屋の外に出ていった。その後のざわめきを静める兵士たちの声が背中に伝わる。

部屋の中にレプリカもサルスもいなかった。聖も紅もいない。次々に得られる情報でカルサの頭の中は組み立てられていく。

さっきまで魔物で溢れていた民の部屋周りの廊下も静けさを取り戻しつつあった。千羅とリュナの力だと安易に想像できる。

遠くに千羅の姿は見えるが、リュナの姿はなかった。

「陛下!!」

カルサの存在に気付いた兵士が近寄ってくる。その声に聞き覚えのあったカルサは主が誰なのかすぐに想像がついた。

目の前に来た彼はすっかり息が上がって体力が奪われている。それは走ってきたからではないと彼の姿を見てすぐに分かった。

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