御劔 光の風3
レプリカの中で緊張感が増す。

「殿下を頼むぞ。」

十分な間を置いて出した言葉を残しハワードは颯爽と歩き去ってしまった。

視界から足が消えたのを確認するとレプリカはゆっくりと身体を起こす。

後ろ姿の彼はいつもと変わらない、しかし放たれたばかりの言葉が頭の中でこだました。

「…殿下を?」

一体どういう意味なのかを聞いてみたいがそれは叶わないだろう、後ろ髪を引かれる思いでレプリカも前へと歩きだした。

ハワードは前を向いたまま歩いていても背中にレプリカを感じ取っている。

やがて目の前に紅を連れたナルの姿が見え意識をそちらへ移した、もちろんそれはナルも気付いていたようだ。

「あら、珍しい人。」

ナルの言葉にハワード表情が僅かにほころぶ。

長く城に仕えてお互いに一番古い馴染みであり心を許せる相手だ、ナルは紅を下げて改めて老大臣と向かい合うと嬉しそうに目尻のしわを深めた。

実際こうやって改めて話するのはいつぶりだろうか。

それはお互いに思っている事だった。

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