御劔 光の風3
そんな魔物たちの姿を見た青年は彼らを鼻で笑い、リュナが消えた方向を見つめながら言葉を続ける。

「邪魔しちゃ悪いだろ。」

勿論その言葉はリュナの耳には聞こえてこなかった。

青年の横をすりぬけた後もリュナは決して油断をせず、前後左右、自分の持つ感覚すべてで警戒をし続けながらレプリカの元へ走っていく。

進む先には見覚えのない魔物の死骸がいくつも倒れていた。自分ではない誰かが戦った跡、それはレプリカなのかそれともと考えが深くなりそうになり進む足が遅くなりかけた時だった。

リュナの身体に巻き付くように光が彼女の前をよぎる。

光輝く翼、その正体の予想はすぐに付いて名前を呼んだ。

「桂?」

光の精霊・桂は自らの身体から光を発してもの言いたげな表情を浮かべる。

「カルサが私を探しているのね。」

レプリカの風を感じた瞬間、カルサには何も告げずに走り出してしまったことを今になって少し後悔した。きっと心配をかけてしまったに違いない。

いまいる場所を告げようと桂に手を伸ばして触れようとした時にリュナはもう一つの力の存在に気が付いた。

勢い良く顔をあげてその方向を見つめる。少し目を細めて様子を伺った。

「桂、貴方も。」

そう言うとリュナは力の感じた方向へ走りだし、もう少しのところで身を潜めた。この角を曲がった先にそれはいる、ちょうど曲がる手前でリュナは身を屈め、気配を消して様子を伺った。

少しだけ顔を出し、その目に映ったものを見て慌てて飛び出す。しかし進みたくても、そこから一歩も動けないほどの衝撃を受けてしまい立ち尽くしていた。

リュナの目に映ったものはぼろぼろの姿のサルス、そしてその手には血まみれのレプリカが抱えられている。

彼らの傍には地の精霊・榎の姿があり、力の気配の原因は榎なんだと頭の隅で理解した。力のない歩き方だがサルスが向かってくることによって少しずつ距離が縮まり、リュナの目の前で足を止める。

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