御劔 光の風3
自分が魔物であると知った以上何かに振り回される予感はあったのだ。

「セリナとは何?」

「私の娘よ。」

髪が身体に落ち、風が消えた。

リュナの大きく開かれた目は何を映しているのか分からなくなった。声にならず、吐く息だけの笑いが短くもれる。自嘲に染まったその息はさらに彼女の心を黒く塗りつぶした。

全てから遮るように額に手を当て震えるため息を長くつく、その表情は寂しげに微笑んでいる。

「この戦いの意味は?」

表情のわりにハッキリとした口調でロワーヌに投げかけた。

「セリナを取り戻す、それが終われば意味などない。」

ロワーヌの強い気持ちが声にも反映した。

リュナは額に当てていた手を空へかざし、切るように速度を付けて振り下ろす。その瞬間に自らを覆っていた風の結界が壊れた。

また戦うことになるだろうと前もって作っていた防御は何の意味も無くなったのだ。

「ならば、連れていきなさい。そして魔物を撤退させて。」

強い眼差しが真っすぐにロワーヌに向けられる。ロワーヌは時間をかけてリュナに近付き目の前に立った。

「約束する。」

リュナはロワーヌと目を合わさずに真っすぐに前を見ていた。それはきっとロワーヌの胸元あたりだろうか、彼女はリュナよりも、もしかするとカルサよりも背が高いのかもしれない。

やがてロワーヌは両手を彼女に伸ばして包み込むように抱きしめる。

「おかえりなさい、セリナ。」

リュナの瞳が名残惜しそうにゆっくりと閉じていく。

そして、第二の襲撃が幕を閉じたのだ。

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