御劔 光の風3
そして一人になった瑛琳の許にラファルが近寄ってきた。瑛琳は階段を下りて彼の傍に立つ。
「ラファル。ありがとう。」
ラファルが口にくわえて運んできた聖水を受け取ると、蓋をとって弧を描くように宙にばら撒いた。それと同時に瑛琳の力で祭壇の周りに水の膜を作る、聖水はその上に貼りつくような形で撒かれた形になった。
結界を張ったのだ。
「これで少しは清らかな空気の中で眠ることが出来る。」
瑛琳は聖水の入っていた瓶をラファルに返し再びナルの方を見る。見つめているだけで涙が溢れそうだ、こんなにも彼女を失った悲しみは大きい。
頭の中で反響しているナルの手紙はあまりにも信じ難い内容だった。心に影を落としているのは瑛琳だけではない、あの手紙に目を通した者は燃えカスの様なものを抱えてしまったのだ。
それでもやらなければいけないことは沢山ある。
城内に戻ったカルサたちを待っていたのは、変わらずに慌ただしく賑わう女官や兵士たちの姿だった。それは村に被害があまりなかった事を知った民たちが次々に帰路につく喜ばしい光景でもある。
民たちは兵士の引率により長い列を作りながら次々と部屋を後にしていく、カルサはそれを遠目に見ていた。
最初は安堵して微笑んだが、いずれそれは淋しい表情へと変わってしまった。彼が何を思い、何を悔いているのか千羅には自分の事のように分かってしまう。
「貴方が自分を責めても事態は何も変わりません。諸悪の根源は皇子じゃない。」
思いがけない千羅の言葉にカルサは驚いた。目を合わせても千羅は表情を変えず、それ以上は口にしない。カルサは民たちの姿を目に映すと彼らに背を向ける形で目的の場所に足を踏みだした。
「老大臣の所にいこう。」
歩きながら千羅に告げる、暫くすると正面に現れた兵士が走って近付いてきた。ただ事ではない表情に二人を取り巻く空気が一気に変わる。自然と兵士を迎え入れるようにカルサも歩み寄った。
「どうした?」
「陛下、ナータックさんが目を覚ましました!」
「ナータックが!?」
兵士の第一声にカルサは食い付いた。
「ラファル。ありがとう。」
ラファルが口にくわえて運んできた聖水を受け取ると、蓋をとって弧を描くように宙にばら撒いた。それと同時に瑛琳の力で祭壇の周りに水の膜を作る、聖水はその上に貼りつくような形で撒かれた形になった。
結界を張ったのだ。
「これで少しは清らかな空気の中で眠ることが出来る。」
瑛琳は聖水の入っていた瓶をラファルに返し再びナルの方を見る。見つめているだけで涙が溢れそうだ、こんなにも彼女を失った悲しみは大きい。
頭の中で反響しているナルの手紙はあまりにも信じ難い内容だった。心に影を落としているのは瑛琳だけではない、あの手紙に目を通した者は燃えカスの様なものを抱えてしまったのだ。
それでもやらなければいけないことは沢山ある。
城内に戻ったカルサたちを待っていたのは、変わらずに慌ただしく賑わう女官や兵士たちの姿だった。それは村に被害があまりなかった事を知った民たちが次々に帰路につく喜ばしい光景でもある。
民たちは兵士の引率により長い列を作りながら次々と部屋を後にしていく、カルサはそれを遠目に見ていた。
最初は安堵して微笑んだが、いずれそれは淋しい表情へと変わってしまった。彼が何を思い、何を悔いているのか千羅には自分の事のように分かってしまう。
「貴方が自分を責めても事態は何も変わりません。諸悪の根源は皇子じゃない。」
思いがけない千羅の言葉にカルサは驚いた。目を合わせても千羅は表情を変えず、それ以上は口にしない。カルサは民たちの姿を目に映すと彼らに背を向ける形で目的の場所に足を踏みだした。
「老大臣の所にいこう。」
歩きながら千羅に告げる、暫くすると正面に現れた兵士が走って近付いてきた。ただ事ではない表情に二人を取り巻く空気が一気に変わる。自然と兵士を迎え入れるようにカルサも歩み寄った。
「どうした?」
「陛下、ナータックさんが目を覚ましました!」
「ナータックが!?」
兵士の第一声にカルサは食い付いた。