御劔 光の風3
出来るのは自分しかいないと、その事実を痛いくらいに彼は知っている。
そしてその役目を今まで担ってきたのがカルサだということも分かっている。
吐き出す息が震えているのはまだ心が少し乱れているからだろうか。何回か繰り返した深呼吸の中で、ふと脳裏に浮かんだ思い出があった。
目を覆っていた右手をゆっくりと下ろして両目を開く。右目が微かにぼやけているが、確かに二つの目で見えていた。いまこの瞬間は確かに自分が自分の物であると言える。
サルスは立ち上がり再び歩きだした。前へと進む気持ち、それはすべて彼のプライドが原動力だった。ただ少しの力を貰いたくて救護室へと向かう。
いつもとは違うざわめきの声は喜びの色に染められて部屋に入る前から分かるほどに空気が違っていた。
「殿下!」
サルスに気付いた兵士が敬礼をすると、サルスの登場が波のように伝わり部屋に入った時には全員が頭を下げて迎え入れる。部屋を見渡しても明らかにいつもと違うとサルスは気付いた。
「怪我人がいないな。」
それがサルスの素直な感想だった。何人かベッドに横になっている者もいるが、その様子は子供が昼寝をしているように穏やかだ。何より他のベッドは綺麗に整頓されていた。
ここは確か重症患者を集めた部屋の筈だったのにと記憶を呼び起こして首を傾げる。この事態は通常では有り得ない筈だ。
「何があった?」
一番近くにいた兵士に問いかけると、兵士は数歩サルスに近寄り事のあらましを簡潔に伝える。
カルサの力であること、サルスの中でその結論が出た瞬間に表情が変わった。それは近くにいた兵士が思わず身を退くほど冷たい表情だったのだ。
「へえ。」
サルスはベッドの上で眠っているタルッシュに視線を合わせた。ゆっくりと近づいていく様子は奇妙な緊張感を周りに与え、誰もが彼に道を譲ってその行方を見守る。
タルッシュの隣のベッドで眠るのはカルサ休むように命ぜられたエプレットだった。しっかりと二人の顔が見える位置まで近付き、サルスはその目に焼き付ける。
「こいつらが光玉を、ね。」
そしてその役目を今まで担ってきたのがカルサだということも分かっている。
吐き出す息が震えているのはまだ心が少し乱れているからだろうか。何回か繰り返した深呼吸の中で、ふと脳裏に浮かんだ思い出があった。
目を覆っていた右手をゆっくりと下ろして両目を開く。右目が微かにぼやけているが、確かに二つの目で見えていた。いまこの瞬間は確かに自分が自分の物であると言える。
サルスは立ち上がり再び歩きだした。前へと進む気持ち、それはすべて彼のプライドが原動力だった。ただ少しの力を貰いたくて救護室へと向かう。
いつもとは違うざわめきの声は喜びの色に染められて部屋に入る前から分かるほどに空気が違っていた。
「殿下!」
サルスに気付いた兵士が敬礼をすると、サルスの登場が波のように伝わり部屋に入った時には全員が頭を下げて迎え入れる。部屋を見渡しても明らかにいつもと違うとサルスは気付いた。
「怪我人がいないな。」
それがサルスの素直な感想だった。何人かベッドに横になっている者もいるが、その様子は子供が昼寝をしているように穏やかだ。何より他のベッドは綺麗に整頓されていた。
ここは確か重症患者を集めた部屋の筈だったのにと記憶を呼び起こして首を傾げる。この事態は通常では有り得ない筈だ。
「何があった?」
一番近くにいた兵士に問いかけると、兵士は数歩サルスに近寄り事のあらましを簡潔に伝える。
カルサの力であること、サルスの中でその結論が出た瞬間に表情が変わった。それは近くにいた兵士が思わず身を退くほど冷たい表情だったのだ。
「へえ。」
サルスはベッドの上で眠っているタルッシュに視線を合わせた。ゆっくりと近づいていく様子は奇妙な緊張感を周りに与え、誰もが彼に道を譲ってその行方を見守る。
タルッシュの隣のベッドで眠るのはカルサ休むように命ぜられたエプレットだった。しっかりと二人の顔が見える位置まで近付き、サルスはその目に焼き付ける。
「こいつらが光玉を、ね。」