御劔 光の風3
「いや、気を遣わせて悪かった。」

思いがけない言葉に兵士はゆっくりと顔を上げ様子を伺った。

「どうかしたか?」

「い、いえ!」

いつものサルスだ。さっかまでの刺々しい雰囲気はない、それが分かると自然と安堵の笑みが浮かんだ。さっきの姿はどこか身体の調子が悪いからのものだったのだろう。

周りに気を遣い丁寧に接する姿こそが自分たちの知るサルスなのだと周りは静かに安堵した。

「ところで元患者はどうしてる?まさか皆持ち場復帰している訳じゃないだろうな。」

「はっ!戻れる者はそれぞれの部屋で休んでおります。」

「ナータックもか?レプリカはどうした?」

「ナータック様は第1救護室に。レプリカ殿は陛下が連れていかれました。」

カルサが、そう呟いた後に納得の言葉をもらした。

「そうか。」

様々な感情がサルスの中で交差する。その殆どが気持ちを沈めるもので、唯一の救いはレプリカの傷が癒えたことだった。

「状況が変わったところで悪いがすぐに報告書を提出してくれ。兵士たちの状態をすぐにでも調べたい。」

「はっ!」

「頼む。」

辛うじて微笑みを見せたところで思いを断ち切るようにサルスは歩き出し救護室を後にする。こうして歩き回るということは刻一刻と変わる状況を確認できるが、そろそろ定位置を作り構えなくてはいけない状況にもなってきた。

次への一手を用意したのだ。

カルサも動き出そうとしているのだ。

勢い良く歩き出したのも束の間、速度は衰え次第に足が止まってしまった。

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