御劔 光の風3
大きなため息がもれてまた意識が深い闇にのまれそうになる。
孤独なのだ。
少しずつ、でも確実に自分を作り上げていた物が失われていく。家族も、仲間も、意識でさえも確かな手綱がない。掴んで立ち上がる支えが無いから、ただ落ちていくしかないのだ。
もう自力で動く事もままならなくなりそうな、奮い立たせた気持ちが萎えていくのが分かった。
しかし。
「殿下、いかがされました?」
おそらく立ったまま動かないサルスを心配して声をかけたのだろう。気が付けば近くに女官が立っていた。
すぐ近くに居る筈の女官の声は小さく、まるで遠くの方から聞こえているように感じて思わず目を細める。
「何でもない。大丈夫だ。」
小さく答え手を振るとサルスは吸い寄せられるように歩き出した。
考えなければいけないことは山ほどあるし、取り掛からなくてはいけないことも時間が足りないくらいにある。長年にわたって染みついた修正で勝手に頭の中で優先順位が付いて身体は勝手に動いてくれるのだ。
でも今は違う。
どこに行くのか、この先どうするのかなんて考えもなく無心で、本能で歩いていた。
階段を上り向かう先は特別な部屋、ここは王族のみが使用することが出来る場所だった。過去に何度となくカルサと二人で話し合った場所だ。
その昔はこの部屋で王族内の会議が何度も何度も開かれたのだろう。
今となってはたった二人しかいない正統も過去には沢山の人間がいたと聞く。きっとその頃の名残だ。どこよりも広く立派な造り。なにより窓からは城内が見渡せ、優雅に風に舞う国旗が目の前に見える特等席だった。
言葉にし難い、実に誇らしい気持ちになれるのだ。
辿り着いたサルスは後ろ手に扉を閉め窓辺に向かって歩きだした。今日もまたいい風が吹いているらしい、部屋に入るなり力強く揺れる国旗が見えて心臓が大きく跳ねた。
声にならない声で歩き出し、勢いよくしがみつくように窓に手をあててその目に国旗を焼き付ける。
鮮やかな青をベースとした龍の翼をなぞらえた絵が真ん中にあり、それを囲うように木々や風、水を思わせる模様が描かれた国旗。金色の旗は国の象徴、強く気高い龍のような王が治める自然豊かな国。それこそが我が国。
孤独なのだ。
少しずつ、でも確実に自分を作り上げていた物が失われていく。家族も、仲間も、意識でさえも確かな手綱がない。掴んで立ち上がる支えが無いから、ただ落ちていくしかないのだ。
もう自力で動く事もままならなくなりそうな、奮い立たせた気持ちが萎えていくのが分かった。
しかし。
「殿下、いかがされました?」
おそらく立ったまま動かないサルスを心配して声をかけたのだろう。気が付けば近くに女官が立っていた。
すぐ近くに居る筈の女官の声は小さく、まるで遠くの方から聞こえているように感じて思わず目を細める。
「何でもない。大丈夫だ。」
小さく答え手を振るとサルスは吸い寄せられるように歩き出した。
考えなければいけないことは山ほどあるし、取り掛からなくてはいけないことも時間が足りないくらいにある。長年にわたって染みついた修正で勝手に頭の中で優先順位が付いて身体は勝手に動いてくれるのだ。
でも今は違う。
どこに行くのか、この先どうするのかなんて考えもなく無心で、本能で歩いていた。
階段を上り向かう先は特別な部屋、ここは王族のみが使用することが出来る場所だった。過去に何度となくカルサと二人で話し合った場所だ。
その昔はこの部屋で王族内の会議が何度も何度も開かれたのだろう。
今となってはたった二人しかいない正統も過去には沢山の人間がいたと聞く。きっとその頃の名残だ。どこよりも広く立派な造り。なにより窓からは城内が見渡せ、優雅に風に舞う国旗が目の前に見える特等席だった。
言葉にし難い、実に誇らしい気持ちになれるのだ。
辿り着いたサルスは後ろ手に扉を閉め窓辺に向かって歩きだした。今日もまたいい風が吹いているらしい、部屋に入るなり力強く揺れる国旗が見えて心臓が大きく跳ねた。
声にならない声で歩き出し、勢いよくしがみつくように窓に手をあててその目に国旗を焼き付ける。
鮮やかな青をベースとした龍の翼をなぞらえた絵が真ん中にあり、それを囲うように木々や風、水を思わせる模様が描かれた国旗。金色の旗は国の象徴、強く気高い龍のような王が治める自然豊かな国。それこそが我が国。