御劔 光の風3
「サルスが泣く?」

自然と口からこぼれ落ちた声は今のカルサの一番素直な反応だ。緊張していた表情から一変、拍子抜けな素の表情が出ていた。

「陛下、理由は分かりませんが貴方は近い内にこの国を出ていかれるおつもりでしょう。しかしそれはこの国にとって何一つ益はありません。」

大臣の険しい表情はいつにも増したものだった。その雰囲気に一瞬にして気持ちを引き締めさせられる。

「この国は守れませんぞ。」

冷静さを取り戻した大臣の言葉は、さっき武器庫でサルスに言われたものと同じだった。しかし何故かあの時よりも深く重い。それはサルスの上に重ねられたものだからかもしれないがカルサには心地のよくないものだ。

「今まで城や国全体の守りを固めてきた。今まで以上の策も用意してある。万事に対しての備えはサルス就任後もしばらく保つようにしてある。」

「今まで以上では無意味なのです。王が変われば国も変わる、今までとは違う対策や守りが必要です。」

「それは次期王がやればいい。」

「出来るのですか?」

息継ぐ暇もなくカルサと大臣の会話は続いていく。会議中にもたまに見られる光景だが、いつにも増して険悪な状況に貴未は発言者を目で追うことしか出来なかった。

「中途半端な宿題を残すなと言いたいのか?」

「いいえ。」

大臣の声は今までと違い、言葉を濁らすような重い音だった。

「陛下の存在は余りに大きすぎた。いくら陛下が完璧な手を取ったとしても、兵士を含む国民誰しもがそこから抜け出せないでしょう。」

熱い気持ちが鎮まり、大臣は丁寧に言葉を綴り始める。

「私も同じです。いくら殿下が優れた方でも、現国王であるカルサ様からは抜け出せません。」

「それはサルスを侮っているからではないのか?」

「…違うよ、カルサ。」

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