御劔 光の風3
それぞれの脳裏にナルの姿が浮かび上がる。特にハワードにはそれが強くでて思わず目を伏せた。あの時のナルの言葉、散り行く姿は儚くも強さを持っていたあの誇らしい様子が頭から離れない。
貴方はこちら側に来てはいけない。私は知り過ぎてしまった。
問い詰めればよかったと悔やまれるあの時のナルの言葉は少し後悔しているようにも思える口振りだったように感じたのだ。だからこそ来てはいけないと、来ないで欲しいという気持ちが感じられ踏み出せなかった。
だからハワードは必要以上の追求は止めたのだ。悔やまれても、あの時はどうしようもなかった。
「人には知らなければいけない事と、知る必要の無い事がある。大臣、お前に話す事は何もない。」
目を開けてカルサを見つめれば、あの時のナルと同じ様な雰囲気を持っていることに気が付かされる。
そしてまた目を閉じた。毅然とした態度のまま告げたカルサに貴未は彼の名を呼ぶ事で異議を唱える。ハワードを睨むように見据えたままカルサは貴未に対して何の反応も示さなかった。
カルサが待っているのはハワードの反応だけだ。
「陛下。私は大臣という職位に誇りを持っております。その立場故に課せられた命も十分に理解しています。」
突き放されても尚、ハワードは再び立ち向かった。目を開けて、その強い金色の眼差しに物申した。
「私にも国を守る責任があります。貴方様と同じ、この国を守らねばならないのです!」
声に力が入る。カルサに伝えたい言葉と自分に言い聞かせる言葉は同じだった。共に国の為、王家の為、自分の為に長年仕えてきたナルが命を落とした。彼女は自らの命をかけて守れるもの全てを抱きしめようとした。
全身全霊で最後まで闘いぬいた彼女の思いが大臣を奮い立たせる。
「戦う術を持たねば守る事も出来ません。何故それを知る事が許されないのか!」
長い年月の間、責任感だけで務めていた訳ではない。生まれ育ち、過ごしてきた母国を愛しいと思ったから。大切にしたいと思う気持ちからだった。
誰より国を思い国の繁栄の為に尽くしてきた、その自信は誰よりもある。大臣として国政の中心に位置し、その中でも高い位にいる。自分は国を守れる位置に確かにいるのに、それが出来ない事が悔しくてたまらない。
ましてやそれを阻むのが国王であるのなら尚更納得がいかないのだ。
「答えなさい、カルサ。お前はこの国をどうしたいのだ!?」
ハワードの口調が変わった。
まるで子供を教育する大人のような、それは決して一国の大臣と王の関係では有り得なかった。かつての教育係りとしての顔が垣間見える。
貴方はこちら側に来てはいけない。私は知り過ぎてしまった。
問い詰めればよかったと悔やまれるあの時のナルの言葉は少し後悔しているようにも思える口振りだったように感じたのだ。だからこそ来てはいけないと、来ないで欲しいという気持ちが感じられ踏み出せなかった。
だからハワードは必要以上の追求は止めたのだ。悔やまれても、あの時はどうしようもなかった。
「人には知らなければいけない事と、知る必要の無い事がある。大臣、お前に話す事は何もない。」
目を開けてカルサを見つめれば、あの時のナルと同じ様な雰囲気を持っていることに気が付かされる。
そしてまた目を閉じた。毅然とした態度のまま告げたカルサに貴未は彼の名を呼ぶ事で異議を唱える。ハワードを睨むように見据えたままカルサは貴未に対して何の反応も示さなかった。
カルサが待っているのはハワードの反応だけだ。
「陛下。私は大臣という職位に誇りを持っております。その立場故に課せられた命も十分に理解しています。」
突き放されても尚、ハワードは再び立ち向かった。目を開けて、その強い金色の眼差しに物申した。
「私にも国を守る責任があります。貴方様と同じ、この国を守らねばならないのです!」
声に力が入る。カルサに伝えたい言葉と自分に言い聞かせる言葉は同じだった。共に国の為、王家の為、自分の為に長年仕えてきたナルが命を落とした。彼女は自らの命をかけて守れるもの全てを抱きしめようとした。
全身全霊で最後まで闘いぬいた彼女の思いが大臣を奮い立たせる。
「戦う術を持たねば守る事も出来ません。何故それを知る事が許されないのか!」
長い年月の間、責任感だけで務めていた訳ではない。生まれ育ち、過ごしてきた母国を愛しいと思ったから。大切にしたいと思う気持ちからだった。
誰より国を思い国の繁栄の為に尽くしてきた、その自信は誰よりもある。大臣として国政の中心に位置し、その中でも高い位にいる。自分は国を守れる位置に確かにいるのに、それが出来ない事が悔しくてたまらない。
ましてやそれを阻むのが国王であるのなら尚更納得がいかないのだ。
「答えなさい、カルサ。お前はこの国をどうしたいのだ!?」
ハワードの口調が変わった。
まるで子供を教育する大人のような、それは決して一国の大臣と王の関係では有り得なかった。かつての教育係りとしての顔が垣間見える。