御劔 光の風3
「カルサは国を出ます。それはある人物と戦う為なんです。」

「ある人物?」

話し始めからハワードの関心は高かった。

「雷神、風神のような特殊能力を持つ人達の中でも脅威的な力を持つ存在。ヴィアルアイという男です。」

「ヴィアルアイ…?」

「先の襲撃でナータックさんを瀕死の状態にしたのも、おそらくナルを手にかけたのもヴィアルアイだと思います。そして何より二度に渡る襲撃を仕掛けた人物こそが。」

「その男だということか…。」

ハワードの呟きに貴未は苦々しい顔で頷いた。

「カルサが一時期姿を消してサルスがカルサに変装していたことにも関わりが?」

「…気付いてたんですか!?」

息をのむ貴未にハワードは眉を寄せることで答える。

「ナータックさんが怪我をしたあの襲撃の時、カルサとリュナはヴィアルアイによって封印されてしまいました。二人を助けたのが日向です。」

「腕の立つ傭兵か。彼はそういう理由で特別な位置づけをされているのだな。最近は見かけないが。」

「カルサが国外へ逃がしました。」

「逃がした?」

「ヴィアルアイから逃がしたんです。」

ハワードは瞬きを重ね、そしてまた眉を寄せて混乱の表情を浮かべた。逃がすこと、受け入れたこと、最近に起こった全ての不可解な出来事はどこかに繋がっているような気がする。

そのどこかというのがヴィアルアイだというのだろうか。その可能性が高すぎてハワードは道筋が定まらない頭の中を整理するように額に手を当てた。

「脅威的な存在であるヴィアルアイ。彼はカルサがいるこの国を狙っています。」

「それは、カルサが狙いという事か?」

ゆっくりとした口調で尋ねたハワードに貴未は頷く事で答える。予想していた最悪の答えにハワードは思わず目を覆った。

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