御劔 光の風3
「テスタ、ありがとう。」

「何がでしょう?」

「日向を預かってくれた事、感謝している。」

真剣な表情でテスタと向き合った。

それは本当に、心からの感謝を表しているのだと気付かされてテスタの両耳を飾る長い銀のピアスが小さく揺れる。

「いいですか?カルサトルナス。貴方が今思っている事を日向が知らないように、人の本心というのは当の本人にしか分かりません。」

まるで子供を諭すように、声を低く、ゆっくりとテスタは言葉を綴った。

届くだろうかと懸念しながら。

「玲蘭華の思いも誰も分からないんです。」

それが何を意味しているか、カルサには嫌なくらいに伝わっていた。

眉をひそめ、厳しい表情を浮かべて苛立つ感情を抑える。

「それは向こうも同じだ。俺の気持ちもあいつには分からない。」

「…カルサトルナス。」

カルサの言葉の深さはテスタに痛いほど伝わっていた。

歩み寄る寄らないの問題ではない、遠い昔である過去の亀裂は未だに傷痕新しく塞がりようもなかった。

カルサの中の理性と感情、それらを全て超えたところに玲蘭華はずっと位置していたから。

それがどれだけ酷く切ないものかをテスタは痛いほどに分かっていた。

「尋ねたいことがあります。」

「尋ねたいこと?」

「貴方は皇子ですか?それとも…雷神ですか?」

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