御劔 光の風3
過去を生きていくのか、それとも今を生きていくのか。

例え目指すものが変わらなくても、今のカルサには持たなければいけない覚悟であり境界線だ。

魂の道を選ぶか、その身体の息吹に従って進んでいくのかはカルサの望み次第。

それを答えろというのなら言葉は一つしかない。

「どちらも、だ。」

首を横に振って微笑んだがその解釈は難しかった。

それはテスラも感じているのだろう、少し困ったような表情を浮かべて更に問いかける。

「でも貴方は国を出たのでしょう?」

カルサがここにいる理由、そして未来への道しるべについて踏み込んでみた。

いくらヴィアルアイが影響しているとはいえ選ぶのは自分自身である。

国を出てここにいるということは、すなわちこれからは太古の国の皇子として生きていく為なのではないかと、テスタは言葉を続けたのだ。

「この身体は今の時代で生まれたものだからな。」

そう呟いてカルサは自分の右手を見つめた。

今を否定すればこの身体を、過去を否定すれば己の魂を否定することになる。

「二つ合わさって、ようやく今を生きる自分があるんだって昔教えられた。」

「ほう…。貴方にそんなことを言う人が?」

「遠慮のない人が多い環境だったぞ?…それに俺の考えも今ではそうであると思っている。」

微かに笑みを浮かべるとカルサは見つめていた右手をゆっくりと優しく胸に当てた。

「所詮、俺は仕組まれたようにしか生かされない人間だ。ここにいる事も全て玲蘭華の思い描いた通りかもしれない。」

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