御劔 光の風3
瑛琳が不適に笑った。

多分それは、信頼していると千羅に聞かせたかったのかもしれない。今この場で、カルサの口から。

もちろんそれは千羅の為だけではない、瑛琳自身の為でもあった。

決意を新たにした今、これまでの関係を確認しい瑛琳の思いをどこまで理解したのか、カルサは微笑んだ。

「俺の目的はリュナを救いだし全てを終わらせることだ。」

カルサには気付いた事があった。

自分の発言から始まり、仲間となる皆の目的を聞いていく内に頭の中が整理されていく。

きっと物事は単純で、自分の感情や欲を折り重ねてしまっているから複雑になってしまっていたのだと今までの自分の頑なな考えを知ったのだ。

自分に付けられた余計なものを落として改めて千羅や貴未の言葉を受け入れてみる。

それは凄く簡単で、なんて直球なことばかりだろう。

それを理解できない、受け入れられないほど頑なに自分の欲や感情、自尊心が鎧を作り上げていた。

もう鎧は捨てたんでしょう、そんな声がどこかから聞こえてくるようだ。

道を決めて腹を括ったのなら凝り固まった考えや妙な意地はもういらない。

「俺はシードゥルサ国の王だ。そして俺はオフカルスの第一皇子だ。それはどうあがいても変わるものではないし、剥ぎ取れるものでもない。付いて回る責任と覚悟だと思っていた。…今でもその考えは変わらない。」

そこまで声にするとカルサは緊張を表に出して震える息を吐いた。

「誰が傍に来ても、どれだけ肩を並べようとしてくれても常に俺は上の立場にいた。敬語、敬礼、周りからの目…誰かと対等な関係なんてなれる筈がないと思っていた。」

それはすなわち相手に対して責任を持たなければいけないことを意味している。

そう言葉を続けるとカルサはまた長い息を吐いた。

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