御劔 光の風3
「助けると…手伝うと言われてもその人物が怪我をしたときの責任を考えてしまう。何かあったとき迷わず俺は自分を責めてしまうんだ。決定権はいつも俺にあったから。」

頼れと言われても出来る筈がない。

抱え込むなと言われても出来る筈がない。

分かち合いたいと言われても、分かり合えるとは思えなかった。

「俺はいつでも独りでいたかった。」

傍に誰がいても心がそれを突き放す、何が分かるのかと距離を取りたくなるのだ。

大切な人なら尚更この自分を取り巻く危うい状態に巻き込みたくなくて距離をおいた。

この身が危ういことは人に言われなくてもよく分かっている。

出来る事なら早々に自分に絡みつく因縁を取り払って自由になりたかったのだ。

「千羅、瑛琳、お前たちはよく俺に早まった考えをするなと怒ったよな。でも最初の内は俺も死ぬことが怖かった。」

初めて聞かされるカルサの胸の内に千羅と瑛琳も戸惑いを隠せなかった。

互いに顔を合わせ、そしてまたカルサに向き合う。まだ続くカルサの言葉を聞きたかった。

「父上と母上が死んで完全に太古の記憶を取り戻した時、どうにも感情を制御できなくてナルに当たったこともこともある。あの頃は毎晩泣いていた。…どうすれば一番早くケリがつくかを分かっているのにそれを成し遂げる勇気が俺にはなかったからだ。」

そう言うとカルサは右手を自身の心臓辺りに置くと静かに拳を作る。

「もう一度この胸を貫く勇気は無かった。」

その言葉に瑛琳は顔を青ざめて首を横に振った。

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