御劔 光の風3
「これまで仕えてくれたこと感謝している。誰よりも信頼し唯一無二の仲間だとずっと思っていた…勿論これからもその思いは変わらない。ここまで生き永らえてきたのも二人のおかげだ。」

どれだけこの言葉が胸を熱くするだろう。

温かくやわらかい感覚が全身に広がっていくのを感じ、瑛琳は脱力をして膝から崩れそうになった。

「瑛琳!?」

咄嗟に支えたカルサと千羅は慌てて彼女の様子を窺うが、瑛琳は放心に近い状態で涙を流し始める。そんな姿の彼女を見るのは初めてだった。

「申し訳…っ。」

謝罪の言葉を口に出来ないほどの昂りが涙に反映する。

初めてだった。

カルサが生きている事に正面から感謝したのは初めてだった。

それが嬉しくて、ただ嬉しくて涙が止まらないのだ。千羅も俯いたまま口に手を当て、その目に涙を浮かべる。

「私たちは長年貴方様に仕えて参りました。もちろんこれからも変わりません。」

言葉を発せられない瑛琳に変わって千羅が静かに言葉を綴った。

「もう仕えるなんて言わなくていい。これからは友人として、仲間として一緒に戦ってほしい。」

そう願うカルサの言葉に千羅も瑛琳も首を横に振った。

「皇子の信頼を向けて下さるそのお言葉は私たちにとって本当に誇り高い事、最高の誉れです。」

そこまで告げると千羅は瑛琳を支えてカルサとの距離を取り、考える様に頭を少し下げる。

「皇子には最高の友人、仲間がいます。私たちもこれからは友人としても共に戦おうと考えました。でも今のお言葉で私たちの立場が決まった。」

「…立場?」

カルサの問いに瑛琳を立たせた千羅はゆっくりと顔を上げた。

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