御劔 光の風3
「側近としてお仕えすること。私たちにしか出来ない役割を果たす覚悟が決まったのです。」

千羅の言う役割、そしてそれを果たす覚悟が何を示しているのかをカルサは理解できていない。しかし穏やかに微笑む二人は迷いがない目をしていた。

「貴方様の目的を成し遂げる為に前を向いて進んで下さい。私たちは必ずその傍に控えています。」

大切に手渡したその言葉は二人の気持ちそのものだ。

覚悟は出来ている、だがそれが一体何の覚悟かは分からない。しかし彼らは自信に満ちていた。

「皇子の持つべき覚悟は二つ。思いを貫く覚悟、そして来る時までその命を守り抜く覚悟です。」

何を意味するのか、それは口にしなくても感覚で悟ってしまった。

全身が泡立つ感覚に時の終わりを考えて仕方がない。

今までずっと見守っていた貴未たちの様子が変わったのも感じた、彼らも気が付いたのだ。

これまでも言われてきたことに近いかもしれない。

でも根本的なものが異なっているのだと嫌でも伝わってその思いの強さに心が震える。

「安心しろ。…俺が先に逝く。お前たちの最後の役目は俺を見送ることだ。」

その声はどこか嬉しそうで、自然と二人を笑顔にさせた。

「宜しく頼む。」

カルサの微笑みが周りの空気を和らげていく。

瑛琳は頭を下げるとまだ遠くにいる日向に視線を送った。瑛琳の視線に気付いた日向は応えるように笑う。

そして一歩を踏み出した。

確かな足取りは靴音を響かせその存在を周囲に知らせる。

「日向。」

小さく彼の名を呼んだのは千羅。

< 589 / 729 >

この作品をシェア

pagetop