御劔 光の風3
「大丈夫だ、お前の役目はちゃんと分かっている。…俺を連れて行ってくれるんだろ?」

カルサのその声にラファルは微かに目を細めた。

「皇子。」

やがて背後から近付いてきた千羅がカルサに近寄り声をかける。その奥では火の魔法を披露する日向に貴未が大喜びしていた。

確かに日向の力は強くなっているようだと胸の内で静かに理解する自分にため息を吐きたくなる。

「…俺はあいつを巻き込みたくない。」

これほどまでに弱気な呟きは聞いたことが無かった。

叫び声のような呟きは千羅と瑛琳の胸を強く打ち、二人は顔を合わせて瑛琳はこの場を千羅に委ねる。

「巻き込むというのは、悪い意味だけではないと思います。」

千羅の声に促されカルサは顔を上げた。

いつの間に俯いていたのだろう、自分でも気が付かない内に思いの外塞ぎこんでいたようだ。

「捉えるのは相手次第。日向は巻き込まれた方が嬉しいのではないでしょうか?」

思わず耳を疑った。驚いた顔をするカルサに対し千羅は静かに微笑む。

促されるように日向を見れば楽しそうに笑う姿があった。

彼はまだ何も知らない、しかし何かに気付きつつある。

「何も知らされないのは辛い事です。皇子は言えない辛さしかご存じない。そうではありませんか?」

「言えない辛さ?」

「それに日向も皇子です。オフカルス第二皇子としての自分の地位を知った時…彼はどう思うでしょうか。」

耳に入る千羅の声は低く優しい、心地よいものだった。

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