御劔 光の風3
知らない事の孤独、それは自分にも覚えが無いわけではない。ただ、全て知りたいというのは自分のエゴのように感じた時期もあった。

それと同時に知らなくていい事を知ろうとする相手に嫌悪感を覚えた事も。

今は嫌悪感ではなく、知られた後にくる何かに対する恐怖のが大きい。

しかし日向が第二皇子として何を感じるかということは考えたことがなかった。

言われて初めて考えてみたが。

「何も知らない方が幸せだろう。」

あと少しの踏ん切りがつかないのか、それとも認めたくないのか今はまだよく分からない。

あの笑顔に向き合って話す勇気がないだけかもしれないのだ。

カルサのその気持ちは痛いほど二人に伝わっている。

「それも受け止める側の問題です。」

千羅の声はそれこそ自分のエゴだと言っているように聞こえた。

しかし日向には全てを知る権利がある。

それは確かにそうだと納得している自分もいるのだ。

「あいつは本当に日向なのか?」

カルサが呟いた。

「人違いであれば、俺はあいつの一生を台無しにしてしまう。」

その目にしかと日向の姿を焼き付けながら言葉をこぼす。

弱気になるカルサの言葉を受けて千羅は瑛琳と顔を合わせた。

「それは皇子にしか分からない事です。日向が言うように何か感じるものはありませんか?」

「さあな。」

千羅の問いにはぐらかすようにカルサは微笑んだ。

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