御劔 光の風３

窓から眺める景色は壮大で澄んだ青空は緑を映えさせていた。広い大空を二羽の鳥が優雅に泳いでいく、その景色は不思議と貴未を満たしていった。

ここは初めて来る場所なのに不思議なものだ。

「これがオフカルスか。」

妙に清々しい気分になる。

あまりの気持ち良さに貴未はしばらくこの景色を眺める事にした。

「あれ？俺なんで寝てたんだっけ。」

首を傾げても答えてくれる人は周りには居ない。

少し前の記憶を思い出そうと首を反対側に傾げてみてもやはり何も浮かんでこなかった。

「倒れたんだよ、ここに着いた瞬間に。」

不意に声がして辺りを探せば窓の外に声の主を見付ける、どうやらこの部屋に繋がっているバルコニーの手すりに座っていたようだ。

「千羅！どうしたんだよ、珍しく姿を見せるなんて。」

「シードゥルサじゃないんだ、姿を隠す必要もないだろう。」

「…あ、そういうことね。やっぱここがオフカルスなんだよな？」

ああ、そう答えて千羅は視線を貴未から景色の方へと移した。

しかしその表情からは貴未がこの素晴らしい景色を見て感じた気持ちよさとは無縁の様だ。

「えっと、俺ってなんで倒れたんだっけ？」

とりあえず今の千羅に沈黙は与えない方がいい気がして貴未は遠慮なしに話しかけた。

「おそらくは界の扉と反応しすぎたからではないかと言っていた。本来なら貴未は界の扉には行かなくても世界を自由に行き来できる。自分の力と共鳴し合う界の扉の間に長く居た為、身体に負担がかかってしまった可能性があるという事だ。」

「へー。」