御劔 光の風3
光が恋しい。

薄暗い空には少し明るい灰色の雲が浮かんでいて、外の唯一の光は大きな真ん丸とした月だけだ。

淡い金色の光を放つ月は何度もシードゥルサを思い出させ、自然と服の下に隠されていた首飾りの石を握りしめる。

そうだ、持ってきたものはもう一つあった。

自分の力が弱いと打ち明けた時にジンロから渡された首飾り、これは力の増幅剤なのだと後で気付いたが今はもうその必要はない。

自分でも驚くくらい強い力を操れるようになったリュナはそれこそ御劔の戦士だと思わせるくらいに威圧感も備わってきた。

しかし持っているのが当たり前となりまるでお守りの様に身に付けているのだ。

既に身体の一部に近い存在だった。

「魔族の血…か。」

風の力を操れるようになったのは封縛から目覚めてからのこと。

今まで光の属性だった環明の力は光の属性が勝っていたと言えど半分魔族のリュナには巧く扱えなかった。

しかしヴィアルアイの封縛を受けた影響で、風の力もリュナの身体も完全に属性が魔に変わってしまったとロワーヌが言っていたのを思い出す。

その為に封縛したのだとも。

そのまま連れ帰りこのレテイシアで解き放つつもりだったがジンロによって阻まれ、魔族となったリュナは光の中で苦しむことになったのだとロワーヌは打ち明けたのだ。

あの日々の記憶が思い出されて胸が締め付けられた。

空に憧れ光に怯えた苦痛の日々だ、どれ程自分の命の終わりを予感して震えたか口にしたくもなかった。

いま思い出しても辛さが鮮明に甦って震えそう、あの時は明日の命でさえも約束されていなかった。

それも全て魔族の血のせいだというのなら残念だが腑に落ちる点がいくつもある。

でも諦めきれない。

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