御劔 光の風3
「じゃあ私の半分の光はどうなったの…。」

ロワーヌの言った事を全て信じて受けとめた訳ではない。しかし変な意地を張って疑う気もなかった。

嘘は言っていないと、なんとなくだがリュナにはそう思えたのだ。

それでも諦めきれない光への思い。

この先どうなるかなんて考える余裕なんてないのに一つだけ分かることがあった。

「…っ私の。」

瞼が熱くなりリュナの目に涙が浮かぶ。

手を強く握り口元に力を入れて必死で堪えてみても涙は頬を伝ってしまった。

もう何回ここでこうしているのだろう。

深い闇に飲み込まれた自分はもう二度と光の中へは戻れない。

今まで愛したものは全て光の中にあるのだ。

触れることはおろか見る事さえも叶わない遠いものになってしまったなんて受け入れたくない。

全てを奪われた。

この表現が正しくないのは分かっている、本来なら失ってしまったという方が正しいのだろう。

分かっていても自分の中だけで消化できないのだ。

感情が昂り、声を殺そうと我慢すればするほど余計に涙を誘った。

この感情はまさにシードゥルサでカーテンの隙間から空を見上げていたときと同じものだ。

身体の自由が利かないあのベッドの上で苦悩した日々、それがまたここで繰り返されている。

「カ…サ…。」

呼びたい名前を思い切り叫べたらどれだけ幸せだろう。

カルサトルナス、この名はここでは禁句に近かった。

憎むべき相手の子供である人物、この名を口にすることで何が起こるか分からない。

少なくともロワーヌは玲蘭華に対して強い感情を抱いていることが伝わってきた。
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