御劔 光の風3
印象のある長い襟足が風に揺れると共に、青年は不敵に笑いリュナは息を飲む。

その表情に見覚えがあった。

「あなた…あの時の!?」

魔物の襲撃の中でレプリカを探していた時、魔物に囲まれ足止めされていたリュナを助けてくれた青年と目の前の青年が重なる。

あの時は気になったが状況が状況なだけに深読みはしなかった。だが彼が今ここにいる事で分かったことがある。

「魔族だったのね。」

荒むような言い方に青年は鼻で笑った。

「お互いね。」

ぶつかり合う視線はお互いに逸らさない、それはまるで探りあっているようだ。

やがて青年が足を動かしリュナの方へと距離を縮めてくるが、これ以上近付くなとリュナは眉を寄せることで訴える。

青年は眉で反応を示すと両手を挙げてそれに従った。

「レテイシアへようこそ。魔族が住まう闇の世界に歓迎しよう、セリナ。」

「リュナ・ウィルサよ。」

妖しく光るその目を細めて口角を上げる、その口で呼ばれた名前をリュナは即座に強く否定した。

怒りの感情を露わにする訳ではないが受け入れていないことは十分に伝わってくる。

おそらく背景を少しでも知っているのだろう青年はどっちでもいいかと呟いて肩を竦めた。

「光の世界でのプライドかは知らないが魔族も今までと大して変わらないさ。向こうでは獣物のイメージが強くて、魔物とか言われてるみたいだけどな。」

青年の言葉を聞いてささやかに乱れていたリュナの感情は落ち着いたようだ。

どういうつもりなのだろうか、この青年が声をかけてきたその意図が読めない。

あの時シードゥルサで会っていたにも関わらず彼はリュナを逃がし魔物の足止めをしてくれた。

今でもそうだが企んでいるのかそうでないのか、ヴィアルアイやロワーヌの手先では無さそうな気もするが捨てきれない可能性に青年の腹の内が気になる。

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