御劔 光の風3
ただ、興味を持たれているのは確かだが。

「ラバ!」

突然若い女性の声が響いて二人を包む空気変わった。

明らかにこちら側に投げられた声の持ち主を探すが、彼女の場合はすぐに気配でどこにいるかが察しが付く。

そう思うと尚更近くに居る青年の気配が読めなかったことが気になるとリュナは横目で彼を見た。

「永(はるか)。」

青年から出た名前にリュナの目が大きく開く。

そして再び声の主である女性に目を向けると彼女はこちら側へ向かって来ているようだった。

栗色の肩までの長さがある髪、白い肌、彼女もいわゆる淡い色の髪だ。永と呼ばれた女性は伺うように青年を睨みながらも素通りしてリュナに近付いてきた。

「ラバ、何もしてないでしょうね?」

どうやらラバというのは青年の名前らしい。名を呼ばれた青年は視線を宙に逃がして肩を竦めた。

永はラバから守るようにリュナの前に立つと物言わず睨むことで彼の仕草の信憑性を疑う。

「何もということが何を指しているのかが分からない。」

表情を変えずにそう答えたラバに対し不満を顔に出して目を細めたかと思いきや、永は短いため息を吐いただけに終わる。

そしてリュナの方を向いて不機嫌そうな表情を柔らかく崩した。

「いつものように食事を置きに行ったら居ないんだもん。びっくりした。」

永の言葉にリュナは何の反応も示さない。

ここに来てから一度も食事を取ってはいないが元々何かを食べたいという欲が出てこなかった。

なので自分用に食事が用意されていることも運んできていた事も知らなかったのだが、そもそも寝室から一切出るつもりも、誰かと会うつもりもなかったので食事のことはどうでもよかったのだ。

だから永の言葉はリュナにとって関心を示さないものになる。

それよりも光の世界の住人だったであろう永自身についての方がよっぽど興味を引いた。

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