御劔 光の風3
それは一人にしてほしいという訴えであるのは明白だったが、永もラバもそれを尊重する気はなかった。

遠くを見つめるリュナが今、何を欲しているのか永は知っていたから。

「私と一緒。私もここに来た頃は光が恋しくて、よく外に出てた。ま、今でもそれは変わらないけどね。」

壁に手をついて外を眺めるリュナの横に静かに近寄って並ぶ。

なんの感情も持たずに向けられたリュナの視線に負けず、永はまた笑みを浮かべて空を見上げた。

ここに来た頃という言葉には気になる部分がある。

永自身の過去を思い出したのかその目は僅かに切なく揺れたのをリュナは見逃さなかった。

「あの星の光、前はもっと強くて暖かかったんだけど…最近少し弱まった気がする。」

その言葉に誘われてリュナも空を見上げる。

広い空に確かな存在を見せる大きな星、そこから放つ光は今のリュナにとってすがりたい程恋しいものだった。

目の前にいる永が本当に貴未の探している永ならば、光の中で生きていたのは間違いない。

光が恋しい気持ちにきっと嘘はない筈だった。

きっと今のリュナ以上に辛い思いをしたに違いない。

リュナとは違い永は事故で貴未と引き離されて一人ここにいるのだ。

それはおそらく事故ではないだろうと貴未は言っていたし二人が離れ離れになっていた期間はあまりに長い。

「あの星はオフカルスというらしい。」

空を見上げる永と永を見つめるリュナの間にラバが口を挟んだ。

胸の前で腕を組み、さっきまでとは違う冷めきった目でリュナたちの方を見ている。

しかし殺気がある訳ではない。

緊張を保ちながらリュナはラバの方に身体を向けた。

「光の世界の親玉がいた場所だ。行ったことあるんだろう?」

表情を変えずに話してくるラバにリュナは何も答えず僅かに目を細める。

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