御劔 光の風3
「好きにさせてやれよ。自分で見て感じた方が…よっぽど話が通じやすい。」

「どういう事?」

「住む世界が変わったってことだ。」

それはあまりにも抽象的すぎて永はさらに表情でその意味を問い続ける。

住む世界が変わったのなら自分も同じ状況だと首を傾げたくもなるが、おそらくそれとは違う筈だ。

「お前には分からん事だな。」

注意深くラバの顔を見ていたからこそ気付いた些細な変化、それは次の問いかけを拒むように踏み込むことを許さない思いがある。

予想外のラバの複雑な表情に永は言葉を飲み込んだ。

何の話を通じやすくしたいのだろう、何となくそれはいつか分かるような気がした。

「ラバ。ヴィアルアイ様が連れてきたのって?」

リュナの事は駄目でもこの質問なら許されるだろうと永はラバに問いかける。

ラバは静かに足を進めて永の横に並び、リュナが走り去った方を見つめた。

答えはまもなくだとラバは口を開く。

一方、勢いに任せて走り出したリュナは全神経を研ぎ澄まして光の気配を求めた。

微かな感覚を掴むと、あとは流れるようにそれを辿っていく。自然と走る速度が上がっていった。

恋しさから光を求めているのではない、これは純粋に答えを求めているのだ。

この向かう先に一体誰がいるのかを。

しかしもう身体に巻き付く光の感触で誰がいるのか確信していた。

もっとも光の世界の親玉という言葉で浮かぶのは一人しかいなかったのだがやはりこの目で見て確認したい。

走って、走って走って、必死に腕を振って光を求めた。

進む道はどんどん城の奥へと入っていくのが分かる、景色はそれに比例して暗さを増していくが今は気にならなかった。

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