御劔 光の風3
もう止められないものの方が多過ぎて、可能性を探すことすら無駄だと諦めるしかなかった。

気が遠くなるような時間を生き続けたマチェリラの心境なんて想像することすら迷惑なのかもしれない。

マチェリラの強い眼差しはカルサのものと似ていた。

強い憎悪だ。

「…マチェリラはどこに行ってきたの?」

「石碑。…よく兄さんと羽根を休めたの。」

「フェスラは…。」

「カルサトルナスに殺されたらしいけど…仕方のないことだと思うわ。兄さんが邪竜にとりつかれてしまえばもう…息の根を止める以外に方法はなくなる。」

圭の言葉を遮った答えは少し早口だったように思う。

どれだけ直接の言葉を使いたくなくて他を探しても変えようが無かった結末に、マチェリラは変に力が入ってしまった。

兄は殺されたと、殺される以外に方法は無かったのだと分かっていてもやりきれない。

不要なものまで思い出されるこの地は愛しくも苦しい毒の様なものだった。

「私はもうここに居たくないの。一分でも一秒でも早く事を進めたくてじっとしていられないわ。」

「…そうね。マチェリラ、一つ伝えておきたいの。」

「何?」

「私は玲蘭華をかばうつもりは無いわ。」

圭の言葉にマチェリラは目を細めて疑いの表情を浮かべる。

今までの彼女の言動からすると擁護しているかのように思われた分、今さら何を言うつもりなのかと怒りさえ覚えそうだ。

しかし圭がそういう人物ではないこともよく知っていた。

どういう言葉が続くのか、マチェリラは眼差しだけで促すように口を開かないでおく。

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