御劔 光の風3
これが寄生していたものの正体か、千羅がそう理解すると同じときにカルサはそれを斬り、とどめだと言わんばかりに光の魔法を浴びせて跡形もなく消し去った。

そして。

「紅、止血を!千羅、圭を呼んできてくれ!」

「分かった!」

「すぐに!」

紅は指示を受けるや否や、自分の上着を脱いで胸から腹部にかけて大きくつけられた傷を塞ぐようにサルスの身体に巻き付ける。

体温を失っていくサルスの手をとってカルサは祈る様に額に押し当てた。

どうか助かってくれ、その思いだけを込めて懸命に回復魔法をあてていく。

「皇子!」

千羅の声が聞こえ勢いよく顔を上げると竜の姿になったマチェリラに乗って圭がやってくる様子が見えた。

待ちきれず立ち上がって救いを求める。

「圭!」

「この人ね?任せて!」

既に詳しい情報を得ていたのか、圭は迷うことなくサルスに駆け寄り魔法をかけた。

それは難易度の高い治癒魔法でカルサでさえも使うことが出来ない種類の物だ。

それこそが魂を生と死へ導く命の守り人と呼ばれていたシャーレスタンの得意魔法だった。

彼女の放つ光に包まれた途端、サルスの表情が変わり始めやがて頬に赤みがさしていく。

それだけで周りからは歓喜の息がもれた。

期待する気持ちが膨らんで自然とカルサの身体が前のめりになりサルスの様子を窺う。

「大丈夫。彼の中で血を作れるから。」

考えていることを口にされてカルサは思わず顔を上げた。

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