御劔 光の風3
「カルサの血を入れなくても大丈夫よ。彼は人のままでいられる。自分の血を入れることを心配していたんでしょう?」

そんなことをしたら彼は人ではなくなるし、合わなければその身を滅ぼしかねないでしょう。

そう続ける圭にカルサの瞼が熱くなった。

「私を信じて任せてちょうだい。」

安心させるように圭が呟くと、その声に誘われてかサルスの手が微かに動き瞼が震えてゆっくりと目が開いていった。

「サルスッ!」

思わずサルスの手を強く握ったカルサが声をかける。

まだぼんやりと定まらない視線の中でも耳に響いた声の主をサルスは探した。

「…カルサ。」

「サルス…っ!」

「…本当…俺にはいつも手加減をしてくれないんだな。」

力なく笑うその憎まれ口は大きくカルサの感情を揺さぶって響かせる。

いつもの、今までのサルスだと確信した安心感でカルサはさらに瞼が熱くなるのを感じた。

「もう少し時間はかかるけど、大丈夫、ちゃんと回復させるから。」

思わず背中を丸くするカルサに声をかけると圭は頼もしい眼差しで頷く。

絶対的な自信は安心を与えて肩の力が抜けていく。

カルサが頷いたことを確認すると圭はそうだと言葉を続けた。

「この状況のことだけど…この焼け落ちた跡。」

そこまで言うと身体を預けきっていたサルスに力が入って表情が曇る。

「すまない。俺が全て。」

「ああ、そうじゃなくて。」

「皇子!殿下!」

思いつめて口を開いたサルスを訂正しようと圭が話し始めた瞬間、遠くから声が投げられ全ての視線を奪っていった。

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