御劔 光の風3
カルサと目が合ったサルスは気恥しそうに視線を外すと意を決して口を開く。

「お前がこの国を出て行く…いずれはそうなると知って俺はずっと準備をしていた。でもいざその時になればこの様だ。だからハワードに俺を監視してくれと助けを求めた。」

息をのむ、そんなカルサの様子を感じてサルスはまた視線を戻して向き合った。

「ハワードは貴未から聞いたと言っていたが、お前からは聞いていないと渋い顔をしていたぞ。」

「…言える訳がない。サルス、お前にも話していなかった筈だ。どうして俺のことを知った?」

苦々しい表情で答えを求める様はよほど知られることを望んでいなかったのだと思い知らされる。

その姿に切なさを感じつつも、いかにもカルサらしいとサルスは笑みをこぼした。

「小さい頃にな。それこそハーブもいて、3人でこの国の舵を切っていた頃だ。…ナルとの会話を盗み聞きしたんだよ。」

「そんな素振りは少しも…。」

「見せたらカルサはすぐにでもいなくなると思ったからな。」

そうだろうと微笑むサルスに言い逃れはできない。

まさにそうするだろうと自分でも安易に予想できたカルサは全身の力が抜けていくのを感じた。

では知られてからどれ程の年数が経っているのだろうか。

「…薄々と気付いたのだと思ってた。」

「はは、それはしてやったりだな。生憎と大半を把握している。…でも知っていても見るのは初めてだったりしたもんだよ。特に彼と顔を合わせた時は。」

記憶を呼び起こして振り返る、それは嫌味なほどに鮮明に思い出されて苦しくなるほどだった。

サルスの視線の先には千羅がいる。

「知ってはいたけど…どこか絵空事だったお前のこと。目の前で戦いが起こって、それさえも夢の様な出来事だったのに身体が勝手に動いてた。おかしなもので後から突きつけられる現実にもう気持ちがどうしようもなくなったよ。絶望と…覚悟と。」

そう言うとサルスは空を見つめてゆっくりと口を閉じた。

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